ふくらはぎと足裏はつながっている!
「第2の心臓」という言葉を聞いたことはありませんか? それはどこ?
「第2の心臓といえば、ふくらはぎ? 足の裏? とよく聞かれます。はい、どちらも第2の心臓といわれています。なぜ、ふくらはぎと足の裏が第2の心臓と呼ばれるのでしょうか?
心臓から全身の組織にいく血管を動脈、全身の組織から心臓に戻る血管を静脈といいます。
心臓から出た血液は、約30秒で全身を駆け巡り心臓に戻ります。その30秒の内訳は、心臓から全身の組織までが約2秒、戻ってくるのが約28秒です。
このスピード差、すごいと思いませんか?
動脈は心臓のポンプが勢いよく押し出すので速いのですが、静脈にはポンプがないので、心臓に戻るスピードは動脈の約14倍も遅いのです。
静脈にはポンプがないうえに、重力に逆らって心臓に向かって進まなければなりません。
そのため、静脈には弁がついていて、これが逆流しないようにしながら、『よっこらしょ』と静脈血を持ち上げながら心臓に戻しています。ともすれは、静脈血は大渋滞を起こしてしまいます。これが、むくみや痛みの原因のひとつに」(片平悦子さん)
その静脈の働きを『そ〜れ、そ〜れ!』とサポートするのが、ふくらはぎの筋肉です。
「歩いたり、走ったり、屈伸運動をして、ふくらはぎが動くことがポンプ役になって、静脈血を押し出しているのです。
そのため、座りっぱなしや寝たきりで、ふくらはぎの筋肉を動かさないでいると、静脈血の渋滞が起こります。
しかしながら、足先の簡単な運動で静脈血の渋滞を解消する方法があります。それを可能にする理由は、膝下にある筋肉の構造にあります。
ふくらはぎの浅い筋肉群(下腿三頭筋)はかかとの骨(踵骨・しょうこつ)についています。さらに、下腿三頭筋の深部にある3つのインナーマッスルは、内くるぶしの後ろ脇を通って、足裏から足の指先までつながっています。
膝下の外側につく筋肉(長腓骨筋・ちょうひこつきん)は、外くるぶしの後ろを回って足裏を斜めに横断しています。
そして、その長腓骨筋と脛骨(けいこつ)のすぐ外側の筋肉(前脛骨筋・ぜんけいこつきん)は膜(結合組織)でつながって足を守っています。
つまり、膝から下の筋肉は足裏まで伸び、足の指先までつながっているものがたくさんあるわけです。ということは、足の指を一本一本バラバラに上手に動かしてあげれば、ふくらはぎの筋肉まで動かすことができるのです。
これが、ふくらはぎに加え、足の裏も第2の心臓と呼ばれる理由です」(片平悦子さん)
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足指の「静脈サポート体操」で第2の心臓が動き出す
通常、ふくらはぎの筋肉を動かすためには、歩いたり走ったり、屈伸運動を行います。しかし、これらの運動をしなくても、ふくらはぎを動かすことができると片平さん。
それが「静脈サポート体操」です。これは特に湯船につかっているときに行うとより効果的ですが、お風呂上がりや、思いついたときに行ってもOK!
【静脈サポート体操】
1 湯船につかって体を温め、右手の指をそれぞれの左足の指の間に入れます。湯船にはバスソルトやアロマオイルなどを入れるとベスト。
2 右手の指全体に力を入れて、足首を反らします。
3 左足の指全体に力を入れて、手首を反らして、足の指と甲を丸めます。これを10回繰り返します。
4 左手の指を右足の指の間に入れて、右足も同様に行います。
「もちろん、運動をしてふくらはぎを動かすのが理想ですが、更年期などで、だるい、やる気が出ない、なんとなく体がつらい…といったとき、または、忙しくて運動ができないときなどに、この体操はとても役に立ちます。
足指を動かすことは、病気やケガなどで寝たきりを余儀なくされるときにもおすすめです。手の指と足の指を組ませることができない状態なら、あお向けに寝たままで、足指全体をギューっと握ったり、思い切り開くといいでしょう。これをゆっくり10回、1日3回行いましょう。すると、筋力が落ちずにすみ、立ち上がれるようになってからリハビリでの回復が早くなりますよ」
【教えていただいた方】

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子